今回の特集は、食とコーヒーのペアリングを探る「バリスタと料理家」の特別編。「OGAWA COFFEE LABORATORY 高輪」を舞台に、前後編の2回にわたってお届けします。


2026年3月28日、ニュウマン高輪「MIMURE(ミムレ)」にオープンした「OGAWA COFFEE LABORATORY 高輪」。約4,000㎡の広大な空間に、コーヒーをはじめ、ベーカリー、ショコラトリー、デリカテッセン、ジェラートなど、12のラボラトリーを展開。それぞれのジャンルが有機的につながりながら、食の新たな楽しみ方や味わいの先にある体験価値をひらいています。


前編では、クラフトビールとワイン、それぞれの個性を引き出すフードとのペアリングを紹介しました。続く後編では、コーヒー&バー「CUP:092 The Extracting Lab」へ。コーヒーとカレー、そしてピザ&スイーツの“おいしいペアリング”をお届けします。

カフェインレスの可能性を追求し、コーヒーカルチャーとおもてなしを届ける。

「CUP:092 The Extracting Lab」は、バリスタがコンシェルジュとなり、一人ひとりの好みや気分に合わせて、上質な一杯を提案するコーヒー&バーだ。ちなみに「CUP:092」の「092」は、コーヒーの抽出に適した88〜92℃の温度帯に由来する。豆が本来持っている香りや味わいを引き出す温度に着目し、抽出そのものを探究するラボである。世界各地の豆が焙煎を経て、一杯のコーヒーに至るまでの背景も含めて、コーヒーの深い部分に触れることができる。ショップでは、常時19種類以上のコーヒー豆をラインアップしている。
 
また、カフェインレスコーヒーに力を入れているのも大きな特徴だ。それは、健康志向の高まりや睡眠の質への関心などから、日々のカフェイン摂取量を調整する「カフェインコントロール」への意識が高い人が増えている背景がある。カフェインレスというと「コーヒーからカフェインだけを抜いた、少し味の薄いもの」というイメージを持つ人もいるかもしれない。ここではそうしたカフェインレスの厚い壁に挑戦し、カフェイン量を調整しながら豆本来の風味を楽しめる技術を追求した。
 
ストーリーライン株式会社と東北大学と共同開発した「ZEN Craft Decaf Process™」という、超臨界CO2を使ってカフェインを選択的に除去する次世代のデカフェ技術を採用し、カフェインの量をコントロールしながら、味わいも妥協しない、新しいコーヒーの楽しみ方を提案している。コーヒーの楽しみ方を広げる選択肢が増えたことで、朝は普通のコーヒー、午後は少しカフェインを抑えて、夜はカフェインレスというように時間帯や体調、気分によって飲み分けることができる。バリスタを務めるのは、テレル・ベネディクト・ロイドさん。愛称はベンさんだ。
 
「私がコーヒーを淹れるモチベーションの根底にあるのは、アメリカのミッドウェストで育った経験です。そこでは接客やホスピタリティがとても大切にされていて、日本のおもてなしにも通じるものがあると思います。たとえば、初めて会う人が家に来たとき、その人ができるだけ心地よく、いい時間を過ごせるようにしてあげる。そういう気持ちが、僕がコーヒーを淹れることにもつながっているんです」

カフェインレスコントロールした、コーヒーをペアリング。

そんなベンさんは、お客さんひとり一人と向き合って、“一杯のコーヒー”を丁寧に届けたい、と話す。カフェインレスコーヒーは、お客さんの好みに応じて、通常の豆とカフェインレスの豆の比率を調整して提供するカフェインレスコントロールをしたコーヒーもある。
 
今回のペアリングに登場するのは、そんな1杯。「エチオピア タデGGナチュラル」「オーガニック カフェインレス エチオピア モカ」を「特製プラントベースカレー」に合わせた。カレールーは動物性食品を一切使わないプラントベース仕立てで、エスプレッソを混ぜて作ったもの。具材には、旬の野菜としっとりとした食感の鶏胸肉のハムを添えている。とても軽やかに食べられる一品だ。

プラントベースカレーには、果実を思わせる香りと甘さを持つコーヒーを。スパイスの風味にコーヒーの華やかな香りが重なり、味わいを軽やかに広げてくれる。

「カレールーに使ったエスプレッソは『OGAWA COFFEE LABORATORY』定番の『ハウスブレンド京都』を使っています。それによって、ちょっとドライフルーツのような味わいとほどよい苦味が感じられ、なめらかな舌触りもある。カレールーにちゃんとコクがありながらも、軽やかに食べられるから、コーヒーとの相性もいいんです。そして、カレーの油分に対してコーヒーが重なり、味わいに深みが増す。カレーを一口含んだ後に、コーヒーを飲むのがおすすめですね」

ペアリングした「エチオピア タデGGナチュラル」「オーガニック カフェインレス エチオピア モカ」は、通常のコーヒーとカフェインレスコーヒーを5:5でブレンドしたもの。ヘルスコンシャスな一杯はとても飲みやすく、爽やかな余韻を感じさせてくれる。さらに、チェリーのようなフルーティーな香りとグレープのような酸味が心地よい。その日の気分や体調に合わせて、カフェインコントロールをすることも可能だ。

コーヒーカクテルの層をステアし、柑橘の爽やかさを香らせる。

次なるペアリングは、「クアトロフォルマッジ」と「エスプレッソ・ジン&トニック」。「PIZ:550 The Composing Lab」のピザは小麦粉、水、塩、酵母だけで仕込んだシンプルな生地が特徴。店内で生地を仕込み、素材・発酵・焼成のバランスを探究している。550℃の高温窯で一気に焼き上げるスタイルだ。
 
「ブルーチーズのクセのある味わい、乳脂肪と塩味が効いた濃厚さがあるから、食した後にすぐに『何か飲みたい』という気持ちになると思うんです。ピザにハチミツをかけたら美味しいから、僕はトニックを使った甘みのあるフルティーなカクテルとの相性がとても心地よいと思って。『エスプレッソ・ジン&トニック』には、エスプレッソ、『タンカレー ナンバーテン』という、グレープフルーツやオレンジなどの生のフルーツと厳選ボタニカルを使用した上質なジンを使っています。加えて、グレープフルーツジュースも。層になったドリンクをかき混ぜて飲めば、エスプレッソのボディ感と柑橘の爽やかさが混ざり合って、コクが生まれます。ピザの塩味と甘さ、ドリンクの酸味のコントラストが楽しい掛け合わせになっていると思います」

濃厚な4種のチーズに、グレープフルーツの酸味とエスプレッソのほろ苦さを重ねて。ハチミツの甘みがドリンクとの橋渡しとなり、意外な調和が生まれている。

豆の個性を探る実験的な抽出・エアロプレスで淹れる、ボディ感のあるコーヒー。

そして、最後はデザートとのペアリング。「ロースターズティラミス」にエアロプレスで抽出した「インドネシア ウーマン イサク オランウータンコーヒー」を。
 
「ティラミスはマスカルポーネを使ったクリーミーな味わいとカカオの濃厚さが特徴的。だから、合わせるコーヒーは、軽すぎないテイストのものがいいなと思いました。選んだのはインドネシアのスマトラ島北部の山岳地帯にある小農園の集まりで作られた豆です。オランウータンの保護や環境保全にも役立てる活動を行っており、コーヒーと誠実に向き合う事で、地元の活性化につなげています。昼夜の寒暖差がある森の中でコーヒー栽培された豆は、少し土っぽさを感じられるスモーキーな味わいで、シナモン、カルダモン、クローブなどのチャイスパイスのような香りや、キャラメルのような甘さが感じられます」

エアロプレスは、コーヒーを空気圧で押し出して抽出する器具。湯温や抽出時間、挽き目などを細かく調整でき、豆の個性をさまざまな角度から引き出せる。

「ティラミスの濃厚な味わいに負けない、コクと甘さが際立つコーヒーの味が『インドネシア ウーマン イサク オランウータンコーヒー』の最大の特徴です。エアロプレスでの抽出は、ハンドドリップよりもコーヒーの油分が濃くなったり、ボディ感が優しい味わいになったりします。余韻として後味が残るけど、味わいはほんのり軽い。こんなふうにペアリングすることで口当たりや味わいが変わっていくことが面白いと思います」

週に一度、一年に52回訪れる“甘いご褒美”をコンセプトにしたスイーツのラボ「DLC: 052 The Healing Lab」が手がける「ロースターズティラミス」。コーヒーを染み込ませたスポンジやマスカルポーネムース、コーヒーの香りをまとわせたクリームを使っている。

オープンな空間で、コーヒーを淹れる様子を眺めながら味わう楽しさがあるコーヒー&バー「CUP:092 The Extracting Lab」。ベンさんのアイデアが光るコーヒーペアリングは、今後さらに新しいレシピが増えていくだろう。それもまた、通う楽しみになりそうだ。

infomation
OGAWA COFFEE LABORATORY 高輪
住所:東京都港区高輪2-22-1 NEWoMan TAKANAWA MIMURE 2階
営業時間:7:00〜23:00
URL: www.oc-ogawa.co.jp/ocl-takanawa/
Instagram:@ogawacoffeelaboratory_takanawa