「MUJI BASE」とは、「良品計画(無印良品)」が展開する、土地に根差した暮らしと文化を体験することをコンセプトにした宿泊施設。ビジネスホテルでも、旅館でもない、“暮らすように滞在する”こ とができる新しい空間だ。日常から離れた場所で生活を楽しみ、土地特有の文化や風習に出合うひと とき。そんな穏やかな時間に心地よい余白が存在する。さらに、“食と喫茶文化を支えるパートナー”的 存在として、1階に「小川珈琲 清水店」がある。今回は、「良品計画」の宿泊事業「MUJI STAY」を推進する野村俊介さんと「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」の支配人である伊藤遼哉さんに話を伺った。

「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」の支配人を務める伊藤遼哉さん(写真左)と「良品計画」宿泊事業課 課長の野村俊介さん(写真右)。

地域に暮らす感覚を感じながら、旅を楽しむ。

旅館に宿泊する贅沢。ビジネスホテルにステイする気軽さ。それぞれの場所が導く、旅情感や旅の趣と いうものがある。「MUJI BASE」はそうした場とはひと味違う、新たなアングルを与えてくれる滞在 拠点である。2026年5月20日にオープンした「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」は、京都市東山区清水エリアにある。この地域に40年以上根差したホテルを改修し、街の風景の一部となっていた外観を引き 継いだ。ここは、京都を代表する観光地でありながら、一本路地に入ると古くからの暮らしが残るエリア。“観光地を巡る”よりも“地域に暮らす感覚”を大切に、観光地と生活圏の境界にあるものにフォー カスし、空間のしつらえやおもてなしを丁寧に届けている。

「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」のロビー。待合いのソファやサイドテーブルも無印良品の商品。雑貨、コスメ、日常着など旅に必要な無 印良品のプロダクトをセレクトし販売。受付でスムーズに購入できる“日常感”が嬉しい。
客室は全18室。内装のつくりは、自宅で過ごしているような気分に浸れる「無印良品」の家具やオリジナルで造作した家具が配されて いる。生活用品なども「無印良品」のもの。部屋の一角にアブストラクトなアートが飾られていたり、花入れが掛かっていたり。京都周辺の工芸作家の作品が目を喜ばせてくれる。

“京都の内側”に溶け込むひとときを。

支配人の伊藤遼哉さんと、全国で展開する「MUJI STAY」を推進する野村俊介さんは、この場 所で“京都の日常”、“京都のふつう”に出合ってもらえたら嬉しい、と口を揃える。

「清水寺へ向かう参道の入口あたりは、少し西へ歩くと地元の人々が暮らす住宅地や昔ながらの商店 街が広がっています。かつてこの地域には、夜明け前から朝市が立ち、人々の生活を支え、彩ってきた と言われています。今、この辺りの地域でその役割を引き継いでいるのがスーパーマーケットの存在。 ここは、住民、料理人、旅人が集まる暮らしを作る場です。そうしたところで買い物をして、客室で召 し上がっていただくというのも、“京都のあるがままを知る”ひとつの旅だと思っています。そんなゆっ たりとした時間を楽しんでもらいたくて、客室には冷蔵庫、カトラリーや皿などをご用意しています。 客室で無印良品の商品をいろいろと体験できるのも『MUJI BASE』ならではの醍醐味です」

3名以上宿泊できる客室には、団らんできるダイニングスペースが。障子のしつらえなど、日本特有の美意識が感じられる空間になっ ている。

それだけではなく、“町歩きの道具”として、6種の道具が用意された心のこもったおもてなしもあると いう。
 
「その中身は、施設オリジナルのマイハバッグ、自分で詰める水のボトル、お菓子、オリジナルブレン ドコーヒー、ノート、ペンになっています。ちなみに私たちが考えた宿泊者に向けた早朝ウォーキングツアーというものがあります。『MUJI BASE KYOTO kiyomizu』の専属ガイドが案内する清水寺の参拝です。土地に根付いた信仰の形に触れることで、またひとつ、町の姿やこの土地で暮らしていた人々の作法を知ること ができるように思うので。ちなみに、お客さまの中には、4泊5日の長期滞在の利用をされる方もいま す。ここを拠点に暮らしを楽しみながら数日間京都を観光する方や、関西エリアまで足を延ばす方もいらっしゃいますね」

客室に用意されている施設オリジナルのエコバッグ。グラフィックは、“ととのう”、“やすめる”、“いただく”、“いのる”、“おくる”、“きよめる”、“あじわう”、“きよめる”、”そろえる”の9種類。

新しい京都滞在の形を提案している「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」のもうひとつの新たな取り組み が、モーニングをはじめとした食事や喫茶の提供だ。2022年にオープンした「小川珈琲 堺町錦店」では“100年先も続く店”を掲げて誠実にコーヒーと向き合い、日本のコーヒー文化を牽引し続けている「小川珈琲」とタッグを 組んだ。おもてなしの心を大切にする純度の高い体験ができるよう、「SMALLCLONE」代表の佐々木一也による余計な装飾を削ぎ落とした空間デザインになっている。

1階にある「小川珈琲 清水店」。宿泊者はもちろん、一般の方も利用可能。ドリンクやフードをテイクアウトして客室で楽しむこと もできる。店が閉まった後は、「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」のラウンジスペースに。フロントスタッフが宿泊客にお茶をふるまう 心づくしのおもてなしが。

スタンスに共鳴する、「小川珈琲」とのコラボレーション。

「この土地ならではの体験をしてもらいたいという想いから、京都で長らくコーヒー文化を紡いでこら れた『小川珈琲』さんと協働することにとても意義があると思い、宿泊施設の1階にお店を構えてい ただきました。日本のコーヒー業界で2004年に比較的早い時期からフェアトレード認証コーヒーの販 売を開始されるなど、生産者が持続的に農業を続けられるように環境や労働に配慮した誠実な活動を リスペクトしています。伝統を大切にしながら、いつも新たな挑戦をされている点においても刺激をい ただいていますね。地元の食材を用いたメニューを考案されているところも僕らの活動と繋がる部分。 体にいい素材をしっかり使って飲食を提供する誠実なスタンスにも惹かれています。そうした豊かな食の体験は、ふだんの生活を見つめ直す、いいきっかけになり得るのではないかと。いろんなシーンで、京都発のサステナブルなコーヒー文化の担い手と、深いご縁が続いていることを誇りに思います」
 
清水店で提供するコーヒー豆は、地球環境や生産者の暮らしを守る“エシカルコーヒー”である 『GRANCA(グランカ)』のみ。ネルドリップでの抽出により、コーヒー豆の油分を適度に通した、丸みのあるなめらかな口当たりが持ち味のコーヒーをお届けしている。暑い季節のメニューに、すっきりとした飲み口のエスプレッソトニックの提供もある。

「小川珈琲 清水店」で提供されるコーヒーは、有機JAS認証、国際フェアトレード認証、バードフレンドリー®認証、オランウータ ンコーヒープロジェクト認証といったエシカルコーヒーのみをラインアップする、「小川珈琲」のエシカルコーヒーブランド 「GRANCA(グランカ)」。

そして「OGAWA COFFEE LABORATORY」、「小川珈琲 堺町錦店」に続き、メニュー監修を 務めるのは「シェルシュ」代表の丸山智博さん。地元食材の新たな可能性や背景を掘り下げ、一つひとつの素材や生産者と丁寧に向き合ったメニュー開発を行う。「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」 宿泊者限定朝食では京都の“おばんざい”を思わせる、記憶に残る奥深い味わいが印象的だ。

宿泊者限定のモーニング(2500円)。京都産小麦を使用した食パン。中央に添えた「白あん糀バター」は、京菓子司 俵屋吉富の白あんを用いた後に残らないすっきりとした甘さが特徴。京丹波のみずほファームの「みずほ産桜たまご」で作った しっとりとした口当たりのやさしい味わい。アボカドのディップをスモークサーモンとクリームチーズで包んだ一品、加茂茄子と万願寺とうがらしの煮びたし、軽やかに食べられるさつまいものポタージュなど。小鉢のメニューは、季節に応じてその都度、変わる。

一杯のコーヒーはもちろん、周辺の散歩のお供にしたいのが京都・美山牛乳の風味をそのまま生かしたミルクソフトだ。京都・美山町は、西日本屈指の天然林が広がる自然に恵まれた地域でおいしい空 気ときれいな水があり、静かな環境の中で飼育されている乳牛から『美山牛乳』が生産されている。濃厚でありながら、軽やかに食べられるクセになる味わいだ。

コーヒーの粉や抹茶をお好みでふりかけて“味変”を楽しむこともできる。ミルクソフト¥589(持ち帰り)。

気軽に楽しめる店のムードが、宿泊客はもちろん、地元の人たちの足取りを軽くする。「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」と「小川珈琲 清水店」が、街とゆるやかにつながる心地の良い場所として、この先 の未来に新たな景色を作り続けてくれるだろう。

infomation
小川珈琲 清水店
住所:京都府京都市東山区清水4–171 MUJI BASE KYOTO kiyomizu1F
電話番号:075-748-1084
営業時間:8:00〜20:00 (L.O.19:30)
URL: www.oc-ogawa.co.jp