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栽培から抽出まで、美味しいコーヒーを
楽しむために知っておきたいこと、すべて。

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産地

コーヒーはどこで作られているのか。

産地を知れば
味の違いを理解できる。

 コーヒーの生産国やその環境を想像したことはあるだろうか? コーヒーは「コーヒーベルト」と呼ばれるエリアで栽培され、それぞれの国、地域、農園の風土を色濃く反映している。産地に目を向け、その特徴を把握すれば、産地ごとの味の違いを理解できる。そして自分が飲みたいコーヒーを選べるようになる。それがこの章の学びのテーマだ。

コーヒーが美味しく育つ
環境とは?

 コーヒーは栽培地域が限られた植物。しかも栽培地の条件に適した品種を選んで栽培するため、必然的に地域ごとに風味特性が異なり、味わいに差がつく。さまざまな条件のなかでも特に重要なのが、降水量、日照時間、気温、標高の4つ。

 降水量は、アラビカ種の場合で年間1,400〜2,000mmといわれている。だが、これだけ降れば良いというわけではなく、いつ、どれくらい降るかが重要なのだ。コーヒーが成長するタイミングで適量の雨が降らなければ花さえ咲かない。また、収穫したコーヒーを乾燥させるタイミングで、たくさんの雨が降ると、乾燥に時間がかかり、発酵やカビの発生原因となって品質低下につながる。一年を通して雨季と乾季がはっきりしていれば収穫、乾燥の見込みが立てやすいのだが、自然界の気まぐれを完全に予測するのは難しい。だからコーヒーは不作に陥ることもしばしばある。

 光合成をするための日照時間も充分に必要だ。ただし、強すぎる日差しは悪影響を及ぼす。ここで重要なのがシェードツリー[fig.01]。例えば、中米の高地の農園は、そこが農園であることに気づかないほど自然の森の中に溶け込んでいる。コーヒーの木に混じって背の高い樹木が植えられていて、キラキラとした木漏れ日を作っている。この日傘のような役割をする木がシェードツリー。コーヒーの成長に充分な日光が優しく降り注ぐように調整している。それだけでなく、コーヒーの木を風から守り、落葉した葉は土壌を肥やす。その種類は様々で、バナナやマンゴーの樹を植え、コーヒーと同時に栽培することもある。

[fig.01]

コーヒーの木の合間に立つ背の高い木がシェードツリー。その役割は多岐にわたる。

 年間の平均気温や寒暖差も味わいに影響している。熱帯植物なのに、ただ温暖なだけでは美味しくならないのがコーヒー。日中は暖かく、夜間は寒さを感じる、この1日の寒暖差が大きいことが美味しいコーヒーが育つ条件といわれている。

 標高の高い地域は日中と夜間の寒暖差が大きくなりやすい。寒暖の繰り返しはコーヒー豆を硬くし、酸味や甘味が際立つ傾向にある。標高の低い地域のコーヒーは、酸味の輪郭が出にくく、ぼんやりとした味わいに感じるものが多い。

 もうひとつ、ここ数年、耳にするようになった重要なキーワードがある。それがマイクロクライメイト。日本語にすると「微小気候」。ごく僅かなエリア特有の気象条件のことで、この影響が味わいに反映される。トップグレードのコーヒーでは農園の中のどの区画で栽培されたのかも評価の対象だ。

栽培条件が違う、
アラビカ種とカネフォラ種。

 品種が異なると、その最適な栽培条件も異なる。アラビカ種とカネフォラ種の栽培条件の違いを説明しよう。

 アラビカ種の栽培は、日中の平均気温が20度前後、年間降水量1,700mm前後が好ましい。乾燥には強く、寒暖差が大きいほど上質に育つといわれている。しかし、標高が高すぎたり、気温が下がりすぎて霜が下りたりするような地形では、とたんに栽培が難しくなる。コーヒーの花は降雨を合図に開花し、やがて結実する。このコーヒーの実が成長する時期に雨が降ることが重要。日当たりが良く、日陰もできる斜面がベストでこの条件をクリアできる恵まれた土地は世界的にも少ない。つまり、トップクオリティのコーヒーが栽培される地域はほんのひと握りだということだ。また、病気の耐性も決して高くなく、さび病[fig.02]などで農園が全滅することもしばしばある。

[fig.02]

さび病が発生した葉。褐色の楕円状の斑点ができて、鉄のサビのように見える。

 一方、カネフォラ種は、日中の年間平均気温は25度前後、年間降水量2,300mm前後が栽培に適した環境。比較的低地での栽培が可能で、寒暖差が少ない場所でなくてものびのびと育つ。高温や湿度にも強く、東南アジアなど熱帯地帯でも栽培できる。主要栽培地、ベトナムが世界のコーヒー生産量の第2位の国であることは、カネフォラ種の栽培しやすさゆえである。
 カネフォラ種は、他家受粉でなければ実をつけることができない(アラビカ種は自家受粉)。つまり花や実をつけるには複数の木が必要となり、異なる木と交配や接ぎ木することで繁殖させている。厳密にはカネフォラ種は自然交配するので、厳しい栽培品種の特定ができない。品種が少なく「ロブスタ」とひとまとめにされるの理由がここにある。

味わい指標となる、
コーヒーの“格”。

 コーヒーは栽培された国やエリア独自の等級(グレード)が存在していて、これを「格付け」と呼んでいる。コーヒーの買い付けやカッピング(味覚チェック)をする際には、この格付けで期待値を設定できる。あくまで、条件が一目で判断できる基準設定で「美味しさの等級」ではないのでご注意を。また、判断の尺度や呼び方は世界共通ではなく、生産国によって少々異なる。

 「標高」を格付けの基準にしているのは、メキシコ、グアテマラ、コスタリカなど、中米の山岳地帯の国。より高い場所で育てられたコーヒーの方がクオリティは高くなる傾向のため、育った場所の標高で格付けする。もちろん、高い地域で収穫されたものほど格付けが高い。

 「スクリーンサイズ」で格付けするのは、コロンビアやケニアなど。専用のふるいにかけ、粒のサイズで評価する。サイズの大きいものほど格付けが高い。

 エチオピアやペルーなどが採用している基準は「欠点数」。サンプルとして取り出した一定量のコーヒーに、虫食いなどの欠点豆や異物、未成熟果実などがどれくらい混入しているかで格付けする。つまり欠点数が少ないほどグレードが高い。

 ブラジル、インドネシア、ジャマイカなどのように、豆のサイズと欠点数の両方で格付けする 「スクリーンサイズと欠点数」を採用している国もある。
 格付けはあくまで目安。参考にしつつ惑わされる過ぎることなく、自分の好きなコーヒーを自由に探して欲しい。

表記を読み解く。
特定銘柄と認証コーヒーとは。

 「ブルーマウンテン」や「キリマンジャロ」など、街のコーヒーショップや缶コーヒーなどで見かけるこれらの表記を「特定銘柄」という。消費者の自主的、合理的な商品選択に役立つように各業種が自主的に定義を決めている。例えば、ブルーマウンテンならば、ジャマイカ・ブルーマウンテン地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆を指し、マンデリンならばインドネシア・北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨマウンテンを除く)で生産されたアラビカ種コーヒー豆を指す。この通り、エリアや品種を限定するので、味わいの方向性があまり変わらない。ブルーマウンテンは日本中のどこで飲んでも、おおよそブルーマウンテンの風味なのだ。特定銘柄は、先述した格付けよりもコーヒー選びの参考になるだろう。

銘柄
定義
ブルーマウンテン
ジャマイカ・ブルーマウンテン地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆
ハイマウンテン
ジャマイカ・ハイマウンテン地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆
ジャマイカ
ジャマイカで生産されたアラビカ種コーヒー豆のうち、上記以外のもの
クリスタルマウンテン
キューバで生産された同国輸出規格に基づくアラビカ種コーヒー豆
グアテマラアンティグア
グアテマラ・アンティグア地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆
コロンビアスプレモ
コロンビアで生産されたアラビカ種コーヒー豆で、同国輸出規格に基づくスプレモ
モカハラー
エチオピア・ハラー地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆
モカマタリ
イエメンで生産されたアラビカ種コーヒー豆
キリマンジャロ
タンザニアで生産されたアラビカ種コーヒー豆。
ただし、ブコバ地区でとれるアラビカ種コーヒー豆は含まない
トラジャ
インドネシア・スラウェシ島トラジャ地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆
カロシ
インドネシア・スラウェシ島カロシ地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆
ガヨマウンテン
インドネシア・スマトラ島タケンゴン地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆
マンデリン
インドネシア・北スマトラ州及びアチェ州
(タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区を除く)で生産されたアラビカ種コーヒー豆
ハワイコナ
アメリカ・ハワイ州南コナ地区及び北コナ地区で生産されたアラビカ種コーヒー豆

[fig.03]

特定銘柄一覧(出典:『コーヒー検定教本』コーヒー公正取引協議会)

 各認証団体独自の基準を設け、栽培環境、社会的要素などを満たしているコーヒーを「認証コーヒー」と呼ぶ。例えば「有機JAS」は、農林水産省の定める基準に合格して認証を受けた原料を、認証を受けた業者が加工したコーヒーを示し、農薬や化学肥料にできるだけ頼らず環境に配慮して生産されたコーヒーであることがわかる。また、「フェアトレード」は、FLO(国際フェアトレードラベル機構)の定めるフェアトレードの国際基準を満たして輸入・加工されたコーヒーで、公正な取引によって生産者の生活の向上につながっていることを示す。他にも「バードフレンドリー®コーヒー」「オランウータンコーヒー」など、様々な認証がある。

[fig.04]

主な認証コーヒーのロゴマーク。

 小川珈琲は、2001年より「有機JAS認証」コーヒーを、2004年に「フェアトレード認証」コーヒーの取り扱いを始め、早くから持続可能な社会の実現に貢献してきた。そして「一杯のコーヒーからできること」をスローガンに、誰もが気軽に世界に貢献できるコーヒーをこれからも作り続けていく。コーヒーを選ぶときに“意義”のあるコーヒーがあることを思い出していただけたら、私たちは嬉しい。

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