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栽培から抽出まで、美味しいコーヒーを
楽しむために知っておきたいこと、すべて。

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ブレンド

重ねて作る味。

ブレンドの強みと難しさ。

 「新しい味わいを作る」、これこそがブレンドをする最たる理由だ。混ぜることでストレートでは出せない複雑な風味や美味しさを創り出し、コーヒーの味わいは無限の可能性を得る。つまりブレンドコーヒーとは、無難なコーヒーではない。ロースターの力量とプライドが詰まったコーヒーなのだ。
 しかし、コーヒーは農作物。自然を相手にするコーヒー栽培は、品質の維持と安定供給が難しく、同じ農園のコーヒーでも収穫年ごとに味わいが変化する。また、生豆は保存状態によっても味わいが変わってしまう。「変わる原料」を使い「変わらない味わい」を作るところにブレンドの難しさがある。

[fig.01]

「OGAWA COFFEE LABORATORY」の“ハウスブレンド京都”は、ブラジル、グアテマラ、エチオピアの3種をブレンド。香り、苦味、酸味、コク、いずれかを突出させることなくバランスのいい味わいに仕上げている。

個性を引き出し、味わいを重ねる。

 ブレンドコーヒーは、作りたい味わいのフレームに沿ってピースを合わせていくパズルのようなもの。組み合わせを変えればどんな形にもなる。つまりさまざまなバリエーションの味わいを作ることが可能だ。

 コーヒーは育つ環境や品種、精選方法などにより、味わいの特徴が異なる。当然だが、ブラジルで収穫されたコーヒーと、エチオピアで収穫されたコーヒーとでは見た目だけでなく、香りや味わいも異なる。ブレンドコーヒーでは、この個性(キャラクター)を味わいの要素として活用している。

 例えば、「酸味・苦味・コクのバランスがよく、なめらかな質感があり、そのままでもミルクを加えてもおいしいコーヒー」という風味コンセプトでブレンドを作るとしよう。この場合、まずはやさしくなめらかな質感のブラジルをベースに考えてみる。日本人が好む味として期待を裏切らない。ブラジルは、口あたりが柔らかく甘みを感じやすい。また程よく苦味がありミルクとの相性がいい。酸味の要素はどう足していくのか?クリアな酸味が楽しめるよう、フルーティーな酸味が特徴のグアテマラや、華やかな香りや酸味が特徴のエチオピアを加える。3種をブレンドすることで複雑な味わい(コンプレックス)が生まれ、コクボディ)が増す。つまり、美味しさのレベルが引き上がる。あとは、どの豆の個性をどれくらい引き出すかの配合比率を考え、ブレンドコーヒーは完成する。

プレミックスとアフターミックス。

 ブレンドする方法は、大きく2つ種類ある。1つ目がプレミックス。これはブレンドするコーヒーを生豆の時点で混ぜあわせ焙煎をする方法。一緒に焙煎するため、作業工程がシンプルで味の一体化が期待できる。そのため、大量に製造する場合はこの方法を取ることが多い。しかし、アイテムごとの個性にあわせた焙煎ができないのがデメリットだ。
 2つ目がアフターミックス。アフターミックスはその名の通り、それぞれのアイテムの焙煎後、煎り豆を混ぜ合わせる方法。つまり、それぞれの個性に合わせた焙煎を施すことで、表現できる味わいの幅が広がり、味わいの作り込みにオリジナリティーが出せる。味わいの微調整が可能で無限に味わいを作ることができるのが強みだ。中身が同じアイテムのブレンドでも、アイテムごとに焙煎度合いを変えれば、その組み合わせの数だけ違った味わいを作ることも可能。コーヒーや焙煎に関する豊富な知識や経験があれば、ブレンドの楽しみが無限に広がっていく。その分、作業工程は複雑になり、設備面ではコストがかかるのがデメリットでもある。

[fig.02]

焙煎度合いの違う煎り豆。ブレンドすることで複雑な味わいを生み出せる。

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