朗読:夏木マリ/ 詩:文月悠光
エシカルキャンペーン「コーヒーの詩」(朗読:夏木マリ/ 詩:文月悠光)の一遍、「永遠の花」の朗読。こちらの詩は、ASUE Fairtrade Coffee ドリップコーヒー Relaxが題材となっています。
永遠の花
文月 悠光
赤土となだらかな山脈に
彼らは守られていた。
豊かな大地のベッドで
いまコーヒーの種たちが
ゆっくりと目覚めていく。
種を愛おしく手のひらに転がしてみる。
この小さな種がパチパチと爆ぜる音を、
その香りや味わいを想いながら。
煎ると、灰色から赤茶色に色づいていき、
華々しく香りがひらくのだ。
銀色のケトルを手に
コーヒーフィルターを覗き込むとき
世界の理ことわりが見えてくる。
美しく均一に挽かれた大地の恵み。
螺旋状に湯気を立てながら、
透き通ったひとしずくが
カップの中心に集まっていく。
地球上の重力が
ここに引き寄せられていくような
甘美なめまいとともに。
よろこびに満ちた世界をあきらめない。
それは心に火を絶やさないこと。
水が澄みきるまで豆を洗うこと。
遠い異国のバラを食卓に飾ること。
苦味の奥に赤いつぼみが身を起こす。
わたしたちは
きょう果たしてきた仕事を誇りに
あす会いにいくための花をささげる。