松政 伸哉

「凸凹の個性が、強いチームをつくる」

現場に立ち続けることで学んだこと

私のキャリアは、「小川珈琲 本店」でのアルバイトから始まりました。大学卒業後、バリスタになりたいという思いで飛び込みましたが、接客経験はまったくなく、「いらっしゃいませ」と声を出すのも生まれて初めての経験(笑)。それでも先輩方に根気よく育てていただき、少しずつサービスの基本や抽出の技術を身につけることができました。その後、準社員、正社員へと進むなかで、発注や棚卸し、数字の管理など運営に必要な仕事を任せてもらえるようになり、次第に店舗を横断的に見る力が鍛えられていきました。

2019年には東京に異動し、「OGAWA COFFEE LABORATORY」の立ち上げと各店の運営にスーパーバイザーとして携わりました。本部の構想を現場に落とし込み、スタッフが納得して動けるようにするのは難しい仕事でしたが、物事を咀嚼して伝えることの大切さを学びました。お客様に提供する一杯の背景にある価値を、スタッフが理解して初めて店は一つの方向へ進んでいける。現場で汗をかき続けたからこそ、身についた実感だと思います。

仕事のやりがいは後輩の育成

スーパーバイザーとして大切にしていること

現在は京都に戻り、堺町錦店を含む4店舗をスーパーバイザーとして統括しています。本部と現場をつなぐ架け橋として、全体の方針を伝えるだけでなく、店舗ごとに異なる課題や改善策に寄り添うのが役割です。小さな修理の相談から、販促の戦略まで。現場の声を吸い上げて対応することで、スタッフが安心して力を発揮できる環境を整えています。

私が大切にしているのは、全員を同じように育てるのではなく、個性や強みを活かしてチームをつくること。接客が得意な人もいれば、抽出の技術に長けた人もいる。その凸凹があるからこそチームは多様性を持ち、お客様により豊かな体験を届けられると信じています。だからこそ、意見を出しやすい空気をつくり、間違いを恐れず発言できるスタッフを育てたい。その声がサービスの改善につながり、お店を変える力になると信じています。

そうした一人ひとりの成長を支える仕組みとして、弊社にはやる気さえあれば誰でも挑戦でき、コーヒーのプロフェッショナルとしてスキルアップできる「バリスタトレーニングプログラム」という研修制度があります。私自身も現場に立ちながら人を育てる立場として、その門戸の広さと基準の確かさを実感してきました。だからこそ、自分自身も常に学び続けたい。役職が上がっても現場に立ち、スタッフとともに挑戦を重ねる姿勢を忘れずにいたい。現場こそが、学びと成長の原点だと考えています。